第135号(2026年6月)株式市場研究会特集号
気候変動対応の経営行動に関する実証分析
湯山智教(専修大学商学部教授)
- 〔要 旨〕
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本稿は,気候変動対応に対する注目が高まる中にあって,①気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同表明,②SBT認定の取得,③RE100参加という3つの気候変動対応に関する経営行動が,企業業績や企業価値向上を伴うものか,さらに実際の気候変動対応を伴っているのか,について検証した。企業業績(ROA),企業価値(PBR),気候変動対応(GHG排出量原単位削減・Scope3開示)を被説明変数とし,気候対応のための経営行動の差に着目したダミー変数を説明変数として用いたモデル推計(固定効果モデル,操作変数法付の固定効果モデル)を行った。また,頑健性チェックのため,傾向スコアマッチングを用いた。分析の結果,気候変動に対するイニシアチブに賛同する経営行動をとる企業群は,GHG排出量にかかるScope3開示も行っている傾向にあることがあげられる。他方で,企業業績や企業価値への影響,さらにはGHG排出量原単位削減に対する影響については確たることはいえないことが示唆された。気候変動対応に代表されるCSR的活動は,フリードマンのいうような淘汰に向かうのか,それともステークホルダー理論の示唆するように利益との両立・相乗効果を有するのか,に対する回答を得るためには,さらなる研究の蓄積を要するといえる。