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第135号(2026年6月)株式市場研究会特集号

バンキング可能な排出権取引市場と先渡市場の役割

倉澤資成(横浜国立大学名誉教授)
田代一聡(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 この論文は,不確実性下におけるバンキング可能な排出権取引市場において,先渡市場の創設が市場均衡に及ぼす影響を理論的に検討する。同様の問題を取り扱っている先行研究において,排出量の正規分布仮定やバンキング量の決定が明示的に取り扱われていないといった理論的課題が存在しており,この論文では排出量の非負制約とバンキング行動を企業の意思決定対象として組み込んだ2期間モデルを構築する。
 分析の結果,先渡市場創設の効果は,市場参加者が直面する制約の状況に大きく依存することが明らかとなった。第一に,全企業のバンキング量の制約が有効でない場合,先渡市場はスポット価格やバンキング総量に影響を与えないこと。第二に,制約が有効に働く企業が存在する場合,先渡市場はその制約を実質的に緩和する迂回路として機能し,全体のバンキング量とスポット価格を変動させるが,その影響の方向は直面する制約に依存すること。第三に, 投機家のような排出規制対象外の主体が先渡市場に参加した場合,彼らのポジションを打ち消すような規制対象企業のバンキング行動が誘発されるため,外部主体の動向がスポット価格を攪乱し得ることが示された。
 これらの結果は,先渡市場の創設のスポット価格への影響が制約に依存して予測しにくいこと,自由な先渡市場への参加が市場の効率化を阻害する可能性が存在することを提示しており,外部主体の参加については慎重な議論が求められる。

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