第135号(2026年6月)株式市場研究会特集号
グリーンボンド市場の制度設計と投資家保護
―わが国における検討の方向性―
久田祥子(東海大学経営学部教授・当研究所客員研究員)
- 〔要 旨〕
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本稿の目的は,グリーンボンド市場における制度設計のあり方を,投資家保護の観点から検討することである。グリーンボンドは,脱炭素化などの環境課題解決に必要な資金を,環境改善効果が期待される事業へ誘導する手段として拡大してきた。しかし,わが国の現行制度は自主規制を中心としているため,資金使途や環境改善効果に関する開示指標,算定方法,報告様式には発行体ごとの差異が残り,投資家が銘柄間の比較を行い,開示情報の正確性や妥当性を検証することは容易ではない。本稿は,投資家保護を透明性,比較可能性,信頼性という情報開示の要素から整理し,これらが投資家の銘柄評価や利回り形成に影響し得ることを理論的に示す。そのうえで,EU市場におけるEuGBとラベルなしグリーンボンドの併存のあり方に着目しながら,わが国の産業構造を考慮した制度設計を検討する。以上を踏まえ,わが国では,法的規制型グリーンボンド,自主規制型グリーンボンド,トランジションボンドを組み合わせた三層構造が選択肢の一つとなり得ることを示す。さらに,この制度設計を具体化するためには,制度強度がグリーンボンドの利回りに及ぼす影響を実証的に検証する必要性を示し,そのための分析枠組みを提示する。