第135号(2026年6月)株式市場研究会特集号
店頭金利デリバティブ市場の変遷
~BIS統計に基づく考察~
吉川真裕(当研究所客員研究員)
- 〔要 旨〕
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BISスタッフによれば店頭デリバティブ市場の変遷に関して3つのイベントが重要であった。1つ目のイベントは1980年代に米国短期国債(T-Bill)先物の変わってユーロドル金利(LIBOR:London Interbank Offered Rate)先物が短期金利の取引対象として定着したことであり,この結果,信用リスクがドル建て短期金利に含まれることになった。2つ目のイベントは1990年代に米国長期国債(T-Bond,T-Note)先物・オプションの取引シェアが低下し,LIBORを対象とした店頭金利デリバティブ取引が拡大した。そして,3つ目のイベントは2021年から始まったLIBOR等の信用リスクを含んだ指標をSOFR(Secured Overnight Financing Rate)等の信用リスクを含まない指標への移行がはじまった。
この3つのイベントは確かに店頭金利デリバティブ取引に影響した大きなイベントであったことに間違いないが,2001年調査から2013年調査まで,そして2025年調査でユーロ建て取引がドル建て取引を上回っていたことを説明できない。
これまでに3年おきの調査結果に合わせて公表されてきたBISスタッフによる論文でも通貨別シェアや国別シェアは個々の対象商品の取引の結果であってそれほど重要ではないという指摘がみられた。同時期に実施されている外国為替取引調査では取引通貨や取引国(報告国)が比較的安定しているのに対して,店頭金利デリバティブ取引では2016年調査以降に大きく変動しており,こうした現象に対する解釈はこれまでのところ十分に納得できるものではなかった。こうした現象を現時点ではうまく説明をすることはできないが,今後も店頭デリバティブ市場を観察し,通貨別や国別の変動をも説明できるように分析を進めていきたい。