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第72号(2010年12月) サブプライムショック後のヨーロッパ金融・資本市場

MiFIDと欧州株式流通市場

吉川真裕(当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 2007年11月に施行されたMiFIDによって,各国の取引所での取引が中心であったヨーロッパの株式流通市場は大きく変化した。MiFID施行から1年を経過した頃から取引所ほど厳しい規制の課されないMTFを開設する動きが活発化し,主要取引所が上場銘柄の取引シェアを低下させ,MTFが取引シェアを上昇させるアメリカで見られた現象がヨーロッパでも見られるようになった。とはいえ,アメリカにおいてもそうであるが,各国の市場においてMTFが取引所に取って代わるという現象は見られておらず,その可能性も今のところはきわめて低い。
 ヨーロッパにおける当面の課題はCESRが推進するLit Marketにおける取引情報の統合であると考えられる。アメリカではCTSを通じて取引情報が統合されているだけでなく,CQSを通じて気配情報も統合されている。統合されていても処理速度が問題となっているアメリカでの状況とはヨーロッパでは段階が異なっている。市場間競争を推進したからには市場の分裂を防止するためのインフラの整備は避けられず,これを民間ベースで進めるのか,アメリカのように規制当局主導で進めるのかが争点となる。
 今回,CESRが民間ベースでインフラ整備が進まなければ非営利機関による取引情報統合を進めるという強攻策に打って出たことが取引情報統合にどの程度影響を及ぼすのかが興味深いところである。

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