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第72号(2010年12月) サブプライムショック後のヨーロッパ金融・資本市場

株式所有構造と株式リターン―大口株主による所有の影響―

山田隆(新光投信(株)運用1部アクティブチームリーダー ファンドマネージャー・東京工業大学大学院博士課程)
蜂谷豊彦(一橋大学大学院教授)

〔要 旨〕

 本稿の目的は,大口株主(ブロックホルダー)による所有が株式リターンにどのような影響を与えているかを実証することである。そのために,株式の「所有比率」と「所有形態」という2つの軸を設定して株式所有構造の類型化を行っている。第1に,株主の属性(投資主体)による所有比率ではなく,「大口株主を特定するための所有比率」を設定する。これは株主総会における決議要件(会社法)に準拠し類型化している。第2に,株主間の「資本関係の有無」を考慮した「大口株主の所有形態」の軸を設定する。分析の結果,大口株主の存在する企業の超過リターンは,「所有比率」,「所有形態」それぞれのカテゴリーにおいて,分散所有されているベンチマーク企業より有意に小さいことが示された。また,大口株主の存在する企業は,財務行動,配当行動および収益性がベンチマーク企業と異なることが判明し,企業行動が超過リターンに与える影響をみると,超過リターンを引き下げている理由のひとつは財務行動に求められることが示唆された。検証結果から,大口株主による所有が,企業のファンダメンタルズや経営者行動を通して,またその所有自体が株式リターンに影響を与えている可能性が高いことを示した。本研究は,日本的なブロックホールディングのあり方を考察する上で,新たな視点を提供するものである。

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