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第72号(2010年12月) サブプライムショック後のヨーロッパ金融・資本市場

サブプライム金融危機とドイツの政策的対応
―金融市場安定化法による銀行救済措置とランデスバンクへの影響―

黒川洋行(関東学院大学教授)

〔要 旨〕

 サブプライム金融危機は,ドイツの金融システムに対しても多大な影響を与え,多くの銀行が経営破綻の危機に陥った。破綻危機に瀕した銀行のビジネスモデルの特徴は,CDO(債務担保証券)やABCPを用いたアメリカ流のレバレッジ型金融を行っていたことにある。サブプライム危機によってインターバンク市場が機能不全に陥ったことが直接的な契機となり,こうした金融機関が一気に経営危機へと陥ったため,ドイツにおける信用システム不安を惹起した。
 これに対し,連邦政府は矢継ぎ早に緊急的な政策対応を行い,包括的な銀行救済スキームとして,金融市場安定化法を2008年10月に制定し,特別基金による政府保証,資本注入などに金融機関が申請できるような枠組みを設定した。さらに,2009年7月にはいわゆるバッドバンク・モデルという不良資産のバランスシートからの分離を可能とする枠組みをも提供した。
 今回のドイツの金融危機における特徴は,民間メガバンクの他に,公的銀行セクターに属している州銀行(ランデスバンク)が大きな損失を出し,政府による救済措置を求めていた点である。州銀行が,収益性を求めてレバレッジ型金融に傾倒してきたことがその要因であるが,その背景には,2000年代に入ってからのランデスバンクをとりまく金融環境の変化があると考えられる。
 金融市場の機能不全に対して,国家による市場介入としての救済措置のスキームがとられたことによって,信用システム不安はとりあえず回避できた。しかし,中長期的には,とくにランデスバンクについては,その受けた打撃の大きさから,今後はさらに再編が加速するとともに,ランデスバンクの公的な所有形態等についても,本格的な構造改革の検討が行われることになるだろう。

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