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第46号(2004年6月) 金融ビッグバン後の投資信託の現状と課題

わが国の株式投資信託のFlow-Performance関係:序説

山本健(横浜国立大学大学院博士後期課程)
米澤康博(横浜国立大学教授)
花村康廣(モーニングスター取締役調査分析部部長)

〔要 旨〕

 本論文ではモーニングスターの運用成果データをもとに,投資家はどのように投信を需要しているのか,成果の良い投信は売れているのか,これらを一般に「Flow-Performance(純増-運用成果)関係」と呼び,この関係がわが国のアクティブ国内株式オープン型投信市場において如何に成り立っているかを実証的に明らかにすることを目的とする。もちろん「成果が良い投信の純増は大きい」が仮説であるが,特段,厳密な意味での仮説検証の作業はとらず,帰納法的な分析を行うことにする。
 これまで投信は「成果が良いと売られる」との通説があったが,われわれの推計結果を見る限り,このような事実は見受けられない。要するに平均レンド的には見受けられたとしても細かくクロスセクションで見る限り,成果が良かったファンドの残高は限界的に増加しているのである。言い方を変えれば成果が良かったファンドほど減少のスピードは低いのである。この意味ではファンド・マネジャーをしてその運用努力のインセンティブを失わしめるような最悪の状況にはないと言える。
 しかしこの事実は逆にChevalier and Ellison[1997]が問題にしたような必要以上にリスクをとってリターンを高く見せかけるagency問題をおこす余地があることを示しており,問題なしとはしない。この点は残された重要な問題であるが稿を改めて論じたいと思う。

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