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第136号(2026年9月)

フィンランドにおける1990年代以降の家計所得分配の変化と資本所得

野村容康(獨協大学経済学部教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 本稿では,Statistics Finlandの所得階層別データを用いて,主に1990年代以降のフィンランドにおける家計所得分配の変化について,資本所得の寄与に着目して分析を行った。
 分析の結果,第1に,所得不平等拡大の主因は資本所得であり,ジニ係数上昇の過半は資本所得によって説明されること,特に配当所得が不平等拡大を主導したことが明らかとなった。また,IFC指数の上昇は,資本所得の上位偏在が所得全体の不平等に結び付きやすい所得構造が形成されたことを示している。他方,キャピタル・ゲインは不平等拡大に寄与したが,その影響は一時的であり,長期的な所得分配構造の変化を説明するものではなかった。第2に,Shapley分解によれば,資本所得の動学的効果は,集中効果よりもシェア効果が大きく,不平等拡大は主として資本所得,特に配当所得の量的拡大を通じて生じたことが確認された。第3に,持ち家の帰属家賃を資本所得に含めると,当初は平等化要因として作用するが,しだいに不平等化要因へと転化し,資本所得の役割はいっそう強まった。第4に,こうした家計レベルでみた資本所得シェアは,1990年代以降マクロ経済における資本分配率の動きと歩調を合わせており,所得不平等拡大の背景には,資本分配率の上昇をもたらしたマクロ経済構造の変化があったことが示唆される。
 以上の分析結果は,フィンランドにおける不平等拡大の契機を1993年の二元的所得税導入に求める「租税政策主因説」について再検討を促すものである。

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