第136号(2026年9月)
VC投資会社の証券デザインについて
佐賀卓雄(当研究所名誉研究員)
- 〔要 旨〕
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ベンチャー・キャピタル(VC)はスタートアップへの投資を専門とする金融仲介機関であるが,その投資は極めてリスクが高いため,投資分野を絞り,徹底的な情報収集に基づき独自の判断基準に依拠して投資判断を行う。さらにリスクに対処するために,シンジケートを組織し,投資期間を2年前後に区切り,その都度投資を継続するかどうかを検討する(ステージ・ファイナンス)。
VC投資会社(VC-backed Firms)は資金調達に当たって優先株を利用することが多い。創業者は普通株を保有し,VCは資金調達シリーズ毎に異なる権利内容の優先株を保有する。優先権の内容は個別ケースによって異なり,しかも各ステージ毎に発行される優先株にも優先劣後構造があり,極めて多様であるため,独特のガバナンス問題(垂直的ガバナンス)も生じる。VCは案件ごとにリスクを評価し,それに対処した証券デザインを工夫するのである。VC投資会社の場合,投資家はVCの他はVCファンドの投資家に限られているため,証券デザインもこれらの投資家との間でのオーダー・メイド型である。
VC投資は極めて不確実性が高いので,あらかじめ微に入り細を穿った契約内容が定められる。しかし,いかに詳細な契約内容であろうと,限定合理性の下での契約は不完備なものにならざるをえないため,将来起こりうる事態に完全に対処することはできない。これを補完するのが「VCサイクル」と呼ばれる独特の投資慣行である。