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第42号(2003年6月) ユーロ誕生後のヨーロッパ証券業界再編

欧州におけるレポ市場
―ユーロ通貨の国際化の観点から―

勝悦子(明治大学教授)

〔要 旨〕

 99年にユーロが誕生して以来,国際通貨の三機能に照らし,国際証券における発行通 貨のシェアが増大するなど,ユーロはドルに比肩する国際通貨になったと言われる。しかし市場の量 的観点からではなく,市場のマイクロストラクチャーなどの質的観点からみると,統合EU市場は引続き分断され効率的ではない。なかでもレポ取引は市場流動性を増大させ市場の機能を質的に向上させると言われるが,ユーロの導入以降もクロスボーダーのレポ取引が活発化していない。クロスボーダーのレポ取引の増大を阻害している要因としては,規制や税制が異なること,市場インフラ,市場慣行が異なることなど,各国の制度の調和が未だに見られないことが挙げられる。とりわけ証券決済については各国ごとに各国CSDが行っており,国境を越えたレポ取引や証券取引が阻害されてきた。各国CSDのリンクやEuroclear, ClearstreamなどのICSDを中心とした汎欧州の証券決済の動きが見られるものの,各国の法的インフラの相違が根強く残っている現状,汎欧州の証券決済の構築や,株式取引所の統合には時間がかかるだろう。この点からみると国際通 貨としてのユーロは過大評価できないだろう。

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