第42号(2003年6月) ユーロ誕生後のヨーロッパ証券業界再編
金融サービス業における最近のM&A活動について
蕗谷硯児(桃山学院大学名誉教授)
- 〔要 旨〕
- 
            1990年代初頭から2000年にかけて金融サービス業での国際的なM&Aの急増現象がみられたが,それは単に金融サービス業の国際的な再編成現象として出現したわけではない。それはこの時期におけるグローバルな産業・金融再編成運動の一環としてとらえる必要がある。本稿では最初に全世界的なM&A活動について概観し,1990年代以降のM&Aブームの大きな特徴としてクロス・ボーダー型超メガM&Aが急増していること,それをもたらした根底にアメリカを始発とするグローバリゼーションの急展開とEUの統合があり,各国における対内直接投資ならびにM&A規制の緩和と公営企業民営化の大波があったことを確認する。次にクロス・ボーダー型M&Aの急増はOECD諸国による対外直接投資の増大現象と表裏一体となっているのは当然として,むしろそれを上回るスピードで伸びていることが注目を集めている。そこで1990年代のOECD諸国の対外・対内直接投資と国際的なM&A活動を対比したデータを紹介してその意味を探ってみた。 
 最後に金融サービス業におけるM&A活動について全世界的な潮流とともにアメリカ,ヨーロッパ,日本等の地域的特徴を比較検討した。
その他の記事
- 
              英国金融制度の変貌
 ―マクミラン・ラドクリフ・ウィルソン委員会とその後―
- イギリスにおける金融サービス補償制度の統合
- 
              金融システムの再生と投資信託
 ―イギリス、アメリカとの比較―
- イギリスにおけるアナリスト行動と規制
- 
              EU経済通貨統合とフランス政府証券市場
 ―“Europlace―Paris”戦略の展開とその問題点―
- ドイツ機関投資家と株式市場
- 
              欧州におけるレポ市場
 ―ユーロ通貨の国際化の観点から―
- ヨーロッパの株式決済市場統合
- アメリカにおけるミューチュアル・ファンドの隆盛とキャピタル・ゲイン課税
- アメリカ年金制度の改革
- 
              アメリカ年金基金におけるETIと社会的スクリーン投資
 ―年金資産運用における社会的責任投資の考察―
- EU投資サービス規制市場指令案の公表(下)
- 価格統制と租税政策(上)―傾斜生産方式を事例に―




