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第124号(2023年12月) 日米資本市場研究会特集号

グローバル金融危機後の米国シャドーバンクの動向

小林陽介(東北学院大学経済学部准教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 本稿の目的は,グローバル金融危機(GFC)後の米国シャドーバンクの検討を通じて,金融規制改革を経て変貌した米国金融システムの現在の課題を析出することにある。GFCの発生を受けて多くの研究が生み出されたが,それらはGFC後の規制改革に有力な論拠を提供した。金融商品の供給サイドに着目する研究アプローチの多くが規制枠組みに取り入れられる一方,金融商品の需要サイドに着目するアプローチの中には枠組みに取り入れられず,現在の金融システム上の課題につながっているものもある。シャドーバンクに関する規制強化によってGFC時にみられた複雑な多重証券化は縮小し,ホールセール・ファンディング拡大の勢いも失われた。MMF市場ではプライムMMFが縮小し,ガバメントMMFが拡大した。ガバメントMMFへの資金流入の拡大は,その運用先の問題を生じさせる。主要な運用先である短期国債の発行が減少したときには,FRBによるリバースレポを通じた資金吸収が増加するという構造が形成されつつある。MMFの運用に中央銀行であるFRBが組み込まれるという新たな課題が生じている。この点に関して,Pozsarの「マクロプルーデンス政策上のツールとして短期国債の供給を管理する」という提起は,今一度検討に値する興味深いアイデアだと言えよう。

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