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第124号(2023年12月) 日米資本市場研究会特集号

有価証券報告書における人的資本の情報開示に関する考察

加藤晃(東京理科大学経営学研究科教授)
豊田雄彦(大妻女子大学短期大学部教授)

〔要 旨〕

 企業価値(時価総額)に占める無形資産の割合が増え,無形資産を創造する要素として人的資本に関心が集まっている。欧米に遅れて,日本でも2023年3月末に決算を迎える企業から有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」等の記載が義務化された。今改定では,必須の記載事項は女性の管理職比率や育児休暇取得率(男女別)など限られるが,継続的にイノベーションを起こして企業価値を高めている企業は,その情報開示の質・量に違いがあるのではないか。分析対象は東京証券市場プライム市場上場企業1,218社(2023年7月時点)を対象とし,テキストマイニングによって東証33業種別に記載文字数,ISO30414の11分類に基づき,共起ネットワーク,クラスター分析,業績(売上高・営業利益率等)との相関分析を実施した。分析の結果,①情報開示(量)には業種・会社によってかなりの差がある,②情報開示(質)は量と相応の関係がある,一方,③記述量の少ない会社はキーワードを満遍なく最小限に記載,④業績の高い企業が必ずしも情報開示に積極的とは限らない。海外のベストプラクティスと比べても遜色のない会社がある一方,クラスターC2及びC1の企業は,単語を散りばめるだけでなく,Why/Where/What/How/Whenを含むストーリー性を持った情報開示が望まれる。また,国内企業もダイバーシティに取り組んでいるが,海外の好事例では多様性に焦点を当てるだけでは不十分との認識から価値創造をもたらすインクルージョンに注力している。

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