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第120号(2022年12月)

限界消費性向の実証分析

宮崎浩伸(南山大学経済学部准教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 消費喚起策を検討する際には,限界消費性向の動きに着目することが重要である。近年,限界消費性向については,理論面だけでなく実証研究においても,研究対象として注目されており,特に異質性や決定要因の解明は喫緊の課題となっている。
 そこで,本稿では,家計の消費構造を分析し,限界消費性向に与える要因について検討した。主な分析結果は以下の通りである。
 第1に,限界消費性向の分析により,年間収入が高い世帯ほど,限界消費性向が低い傾向にあることが確認できた。この結果は低所得者層ほど,流動性制約が厳しいことを示唆している。
 第2に,消費者態度指数が限界消費性向にプラスの影響を与えている分析結果から,消費者マインドの改善が家計消費の成長に貢献していることがわかった。このため,景気回復,とりわけ雇用環境の改善を図ることが家計消費にプラスの影響を与えるといえる。
 第3に,日経平均株価指数が限界消費性向にマイナスで有意な影響を与えている結果が得られたことから,株価上昇により,保有している金融資産が増加し,家計の流動性制約が緩和された可能性が考えられる。また,分析期間の後半における株価上昇は,アベノミクス下での金融政策の影響によるものであり,消費者マインドを改善し,限界消費性向を上昇させる効果までは持っていなかったといえる。
 以上から,本研究で得られた知見は今後の消費に関する経済政策に資するといえる。

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タグ

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