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第117号(2022年3月)

戦前期の株式市場機能と短期清算取引

平山賢一(東京海上アセットマネジメント株式会社)

〔要 旨〕

 戦前期から戦時期にかけての上場企業資金調達は,株式市場等から借入金へと軸足が移行し,資本市場としての株式市場の役割が低下したとされている。また,会社利益配当及資金融通令や会社経理統制令により株式会社の配当率が抑制され,経済新体制確立要綱では企業を「資本,経営,労務の有機的一体」とするなど,株主の権限が制限されたことも,株式市場の低迷につながったとの見解が有力である。
 一方,株式市場では,外部環境や企業業績の変化に応じて柔軟に反応して株価が形成されており,価格決定機能は消失していなかった可能性も指摘されており,「株価不安→株式資金供給機能低下」という因果関係が成立するかは明らかではない。むしろ産業資金供給における株式比率が高かった1930年代前半の株式リスク(株価変動率)は,1930年代後半以降よりも高かったからである。そのため,株価形成と資本市場の機能低下の因果関係を考えるには,より詳細に株価形成に関する定量データ確認をする必要があろう。戦時期に至る株式市場について,企業資金調達機能と価格決定機能を単純に結びつけるのは留意が必要であり,両機能の低下を以て株式市場が低迷したと一括りに論じるには無理があるかもしれない。わが国の場合には資金循環を伴わない清算取引の発展により,両機能が分化した可能性は否めないからである。そこで,わが国株式市場のユニークな特徴の一つである清算取引について,需給動向等に応じて変化する個別銘柄毎に算出されていた東京株式取引所短期清算取引の繰延料を検証し,戦時期における価格形成について考察を加えたい。

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