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第117号(2022年3月) 株式市場研究会特集号

日本の株式取引施設間の代替性
—システム障害時のHFT等の行動と市場の分析

辰巳憲一(学習院大学名誉教授)

〔要 旨〕

 2020年の6月1日にチャイエックス・ジャパン(以降Chi-Xと略)で,10月1日に東京証券取引所(以降東証と略)で,起こったシステム障害によって生じた2件の終日売買停止を事例に,開場していたジャパンネクスト証券(以降JNXと略)のミリ秒単位の個別データを使って,市場の代替がどのように果たされたかを分析する。終日売買停止公表などのイベントの時刻に基づき,1日を複数の時間区分に分ける。設けられた時間区分内における投資家の行動や市場成果を,異なる時間区分の間で,比較する方法を用いる。
 投資家は,高速取引業者(以降HFTと略),JNX独自の指定流動性供給者(以降DLPと略),個人投資家と機関投資家等の4主体で,注文形態別データはFOK(Fill or Kill),Post-Only(ポスト・オンリー),IOC(Immediate or Cancel),デイ注文(Day Order)の現物取引と後2者の信用取引が利用可能である。終日売買停止公表の前後に投資家別注文形態別発注件数,約定率,キャンセル率に起こった変化を分析して,それらの影響を考察する。
 ITサービスやサーバーの分野では国内首位で,金融・証券向けサービスが多い富士通の株価は,これらの証券システム障害に敏感に反応することが考えられ,分析の対象に取り上げる。
 結論を要約すれば,終日売買停止公表直前と直後の間には変化が観測される。そして6月1日にはJNXはChi-Xの必要とされる代替を果たしたと言える。また10月1日にはHFTやDLPは東証のシステム障害でJNXから退避したが,JNXは機能したと言える。JNXは通常時東証の取引時間外となる時間帯で顕著な役割を果たした。

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