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第117号(2022年3月) 株式市場研究会特集号

ESMAデータから見た欧州株式流通市場

吉川真裕(当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 2020年11月18日,欧州連合の証券市場監督機関である欧州証券市場監督機構(ESMA)は『EU証券市場』と題する報告書を公表し,2018年の改訂金融商品サービス指令(MiFID Ⅱ)施行後のヨーロッパの証券市場に関する情報を公開した。MiFID Ⅱ施行後にESMA は従来の取引所(規制市場:RM)や取引所類似施設(MTF)といった取引市場に加えて,顧客と電子的に相対で取引するシステマティック・インターナライザー(SI)や不定期にオークションがおこなわれるペリオディック・オークションでの取引情報を収集しており,これらがようやくまとまった形で公表されることになった。
 本稿では株式市場と債券市場に分けて提示された2019年における取引情報を概観した後,業者の運営するダーク・プール(気配値を公開せずに取引をおこなう市場)での取引を禁止するとともに,RM やMTFでおこなわれるダーク・プール取引も大口取引を除いては気配値を公開している当該銘柄の上場取引所での最良気配の仲値でのみ執行されることになったヨーロッパの株式市場の実態について紹介する。そして,ESMAの公表する株式市場に関する数値は市場外取引(SIとOTC)を過大評価しているという批判と,批判者は市場外取引を過小評価しようとしているという反批判があることを紹介し,その論点を整理する。

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