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第77号(2012年3月) 株式市場を巡る諸問題

証券市場と銀行システム
─ガーリー = ショー金融構造論の再検討─

野下保利(国士舘大学教授)

〔要 旨〕

 今回の世界金融危機は,シャドー・バンキングと呼ばれる貸出システムに注目を集めさせることになった。もちろん,シャドー・バンキングのなかには様々なビジネス・モデルが存在する。ファイナンス・カンパニーなどが小口貸出によって利ざやを稼ぐのに対して,投資銀行や各種ファンドは証券取引を収益源としている。今回の世界金融危機において中心的な役割を果たしたのは,いうまでもなくキャピタルゲインや手数料の取得を目的に新たな証券化スキームを主導した投資銀行やヘッジファンドなどの証券取引関連の金融機関であった。近年急速に多様化し拡大してきた証券取引分野の分析は,抜本的な金融安定化政策を策定するために不可欠な研究分野をなしている。しかし,現代の証券取引がどのような役割を占めるのかについて十分な分析がなされてきたわけではない。そもそも,証券取引自体の金融構造における位置付け,特に商業銀行システムとの関連が必ずしも明確ではないからである。
 伝統理論において,証券市場と商業銀行システムは,本源的貸手が最終的貸し手に貸し出す際の並行した2つの貸出チャンネルとして認識されてきた。証券市場と銀行システムを並列的な2つの貸出チャンネルとする理解が支配的になるのに大きな影響を与えたのは,ガーリー = ショーの研究である。彼らは,資金余剰主体の貯蓄が証券取引を介して資金不足主体に貸し出される直接金融を基礎に,銀行を含む各種金融機関を介する貯蓄の迂回的貸出チャンネルを間接金融として位置付けた。彼らの金融構造論による限り,すべての金融(貸借)取引は直接・間接に貯蓄を源泉とするため,金融資産額は実物経済の成長に結局は規定されることになる。こうした結論は,金融資産額が実物経済の産出額を超えて著しく増大している現状と齟齬を生むことになる。あらためて,ガーリー = ショーの金融構造論を検討する必要がある。
 ガーリー = ショーが主張するように,産出量を増大するためには金融資産と負債の増大が不可欠である。しかし,彼らの主張と異なって,金融資産と負債の増大は,貯蓄増加の結果ではなく,金融(貸借)取引拡大の結果にほかならない。したがって,金融資産(負債)の形成を,貸借関係拡大に収益源を求める利子生み資本及び証券取引資本という資本運動を導入することなしに説明することはできない。金融(貸借)取引を説明する際における資本概念の欠如は,ガーリー = ショーの金融構造認識を転倒させ,金融資産の蓄積について現実と齟齬を生むことになった。現代資本主義においては,主要な決済手段である要求払い預金を創造し貸し付ける預金銀行を基礎にして中央銀行が準備預金と現金供給を行う通貨システムが存在する。この通貨システムの下で証券市場は,創造された要求払い預金残高を証券取引を介して融通しあう仕組みとして位置づけられる。預金銀行システムを基礎に証券市場の現代的展開を分析することが求められる。

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