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第41号(2003年3月) 公社債流通市場改革と国債管理政策

中小企業金融と債券市場

柴田武男(聖学院大学助教授当所客員研究員)

〔要 旨〕

 東京都は中小企業のための債券市場を行政主導で開設し,2000年3月の第1回債から2002年3月の第3回債までで総計約5,200企業・発行総額1,900億円超の実績をあげている。2002年11月から募集が開始された第4回債ではC方式としてはじめて中小企業の発行する私募社債を中核金融機関が引き受けてCBO(社債担保証券)を発行するスキームを取り入れてイノベーションが進展している。こうした私募社債を用いた中小企業への資金供給手段として,中小企業庁の主導する特定社債保証制度があり,純資産額が3億円以上と緩和されたため,利用する中小企業が急増している。
 東京都の債券市場を含めて制度融資を利用するほとんどの場合,中小企業は経営者の個人保証を連帯保証人の形式で求められてきた。本来,合名会社・合資会社と異なり株式会社は有限責任による経営のメリットを享受できるはずであるが,現実には個人保証を通じて中小事業者による株式会社は無限責任を負わされてきた。金融庁の「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」にも零細・中小事業と「代表者等との一体性」が行政の指針として掲げられている。
 日本では,厳しい債務保証によって失敗した経営者の再起が難しいと指摘されてきた。中小企業経営者4万名で構成されている中小企業家同友会全国協議会でも連帯保証人の要らない制度融資の拡充や個人保証の有限責任化を提言している。東京都の債券市場や中小企業庁の特定社債保証制度が多くの中小企業者の関心を集めているのは,間接金融から直接金融にシフトした資金調達手段の多様化としての側面も指摘できるが,同時に,中小企業者の経営する株式会社が個人保証で縛られて合名・合資会社化しているなかで,日本の中小企業者が株式会社制度に託した有限責任という責任制度が私募社債の発行という形式で初めて実現可能という側面も指摘できる。

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