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第26号(2000年7月) 市場間競争の諸側面

バブル期における金融機関の株式投資について

小畑二郎(筑波大学教授・当研究所兼任研究員)

〔要 旨〕

 この論文は,バブル期前後における日本の金融機関の株式投資に関する一般 的傾向について分析することを目的とする。日本の金融機関は,この時期に機関投資家として株式を市場で売買することに本格的に参入し始めたが,その投資行動は,一般 的にいって特異なものであった。それは,株価上昇期にその上昇率を上回る率で株式取得額を急増させ,株価下落期に株式の売却に回るか,もしくは株式取得額を大きく減少させるという行動であった。このような行動は,主として海外の機関投資家からなる海外部門の行動と,ほとんどの場合,正反対となっていた。このような対称性は,どのような理由から生まれたのか,またそのような投資行動は日本の株式市場や国民の資産運用に対してどのような影響を与えるのか。本稿は,このようなことについて考察する。
 そして,金融機関の株式投資は,長期的には,過度に強気な期待と弱気の期待との交替によって説明されるが,短期的な資産運用としては明らかに不合理なものであり,株式市場と国民の資産運用に対して悪い影響を及ぼしかねないということについて議論する。

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