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第26号(2000年7月) 市場間競争の諸側面

レポ取引とアメリカ証券市場の変貌

野下保利(国士舘大学教授)

〔要 旨〕

 アメリカ証券市場の第二次大戦後の展開は,ブローカーディーラーによる証券取引の内部化の拡大として特徴づけることができる。アップステアーズマーケットにおける大口取引が増大する一方,小口取引もブローカーディーラーの内部専用取引システムやATSに回送され執行されてきた。さらに伝統的ブローカーディーラーに代わって小口取引の取扱シェアを伸ばしたディスカンウトハウスやオンラインブローカーも,取引コスト削減のためにインターブローカーディーラー市場としてのECNを構築し取引を内部化する動きを強めている。ブローカーディーラーによる証券取引の内部化は,個々のオーダーフローを仲介する純粋のブローカー業務とは異なり,自己勘定での持ち高形成を不可欠とし,そのため資金調達能力の拡大を要請した。ブローカーディーラーの資金調達能力を増強させるのに最も重要な役割を担ったのが60年代末に復活した民間レポ市場とその拡大であった。レポ市場を中心としたオープンマーケットからの資金調達は,機関投資家のもとに退蔵されていた巨額の証券ストックを流動化することによって証券取引の活発化をもたらす一方,ATSそしてECNを生みだし証券市場の分裂を決定的にした。こうした事態は,気配情報を全米的に統合して最良気配で執行するというナショナルマーケットシステム(NMS)の実効性,そして株価形成のあり方に深刻な問題を提示することになった。

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