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第122号(2023年6月)

MBOは何を変えたのか:
再上場の動機と成果に関する実証分析

川本真哉(南山大学経済学部教授・客員研究員)

〔要 旨〕

 本稿では,再上場を果たしたMBO案件の,再上場の動機とその成果についての検証を行った。その分析結果を要約すると,以下のとおりである。第1に,再上場企業の非公開化前のPBRとフリーキャッシュフロー比率は相対的に低く,アンダーバリュエーションの程度が大きく,手元流動性に余裕がないコンディションにあった。第2に,それら案件の所有構造に目を向けると,非公開化前の役員持株比率は低かった。流動的な所有構造下にある企業はバイアウト・ファンドと組んでMBOを行うことに親和的であり,それ故にエグジットを目指し,その結果として再上場が選択されたものと推察される。第3に,非公開化前から再上場後のパフォーマンスに関しては,ROAは上昇しておらず,総合的な経営効率の改善は観察されなかった。それに対し,ROEは上昇傾向にあったが,それは主にレバレッジの利用に起因しており,総じて収益性,効率性改善の寄与は乏しかった。第5に,PBR,EBITDAマルチプル,名目リターン,IRRで求めた株主価値は,非公開化前から再上場時において向上した。再上場というイベントを通じて情報生産が行われ,マーケットとの情報の非対称性が緩和された結果だと解釈できる。

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