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第122号(2023年6月)

サステナビリティ情報開示の拡充とESG評価の不一致

浅野敬志(慶応義塾大学商学部教授)

〔要 旨〕

 本稿では,2015年から2021年までの日本企業を対象に,サステナビリティ情報開示の拡充とESG評価機関間でみられるESG評価の不一致との関係について実証分析する。サステナビリティ情報開示の拡充の程度は,Bloombergが様々な企業情報開示をもとに独自算定しているESG開示スコアを用いて確認し,ESG評価機関間でみられるESG評価の不一致の程度は,ESG評価機関2社(MSCI,FTSE)の各ESGスコアの差(絶対値)を用いて確認する。
 分析の結果,①時間とともに,日本企業のサステナビリティ情報開示が拡充し,ESG評価機関による評価が上がり,ESG評価機関間の評価の差も狭まっていること,②全体でも環境,社会,ガバナンスといった分野別でも,各情報開示の拡充により,ESG評価機関間の各評価の差が狭まっていること,③環境分野と社会分野における各評価の差がESG評価の差を広げており,ESG評価の差を狭めるためには環境分野と社会分野における情報開示の拡充が有効であること,が明らかになった。②はChristensen et al.(2022)の結果と異なるが,近年において,MSCIとFTSEが年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を含めたESG評価の利用者と対話を重ね,ESG評価手法の改善に向けた取り組みを進めていることなどが,結果に影響していると考えられる。

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