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第115号(2021年9月) 設立60周年記念

アマゾンの銀行化とアップルの金融機関化—金融化との関連で—

掛下達郎(福岡大学商学部教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 ここ数年,巨大テック企業であるGAFA(グーグル,アップル,フェイスブック,アマゾン)の躍進が注目されている。本稿では,GAFAがおこなっている銀行業務と金融業務についてその全体像を明らかにしたい。
 本稿で考察する課題は,GAFA各社が①銀行の3大業務(預金,貸付,決済)にそれぞれどのように進出しているか,②その他の金融業務にどのように進出しているか,③とくにモバイルバンキングにどのように進出しているか,④上記の銀行業務と金融業務において,コストが削減されているか,の4点である。これら4点が相互にどのように関連していたのか,そしてそれがGAFAの銀行化・金融機関化にどのように関与していったかを分析する。
 ①と②について,アマゾンはかなり銀行化し,金融機関化を始めた段階である。同様に,アップルはかなり金融機関化し,部分的に銀行化しつつある段階である。グーグルは,部分的に銀行化・金融機関化しつつある段階である。フェイスブックは,銀行化・金融機関化を始めた段階である。③については,意外なことに,GAFAは,銀行ほど,モバイル決済に進出していない。④については,GAFAを含むテック企業は,貸付業務においてコストを削減することができる。巨大テック企業によるコスト削減があれば,彼らの銀行業務への進出は,経済全体に対して利益をもたらす。これは,金融の本来あるべき姿と考えられる。

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