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第115号(2021年9月) 設立60周年記念

米国における私募市場へのアクセス改善:小口募集取引規制の見直し

若園智明(当研究所主席研究員)

〔要 旨〕

 第45代合衆国大統領であったDonald Trumpの4年間を資本市場の面から振り返ると,その特徴の1つとして,いわゆる私募による資本や資金の調達が顕著に増加している点を挙げることができる。このような私募市場の発達はテック系を中心としたスタートアップ企業の成長の糧ともなり,結果としてUnicornと呼称される巨大な未公開新興企業を数多く輩出した重要な要因ともなっている。わが国でも,次世代を担う新興企業の育成は国家戦略に位置づけられており,米国の私募市場の分析はわが国の経済成長を考える上でも重要であろう。
 本稿は,2020年11月2日にSECが公開した最終規則(Final Rule)を中心として,募集時の登録除外等を伴う取引に関する規制の改正をまとめる。特に,ミニIPO(Initial Public Offering)とも呼ばれるRegulation A(Reg. A)およびインターネットを経由した少額募集であるRegulation Crowdfunding(Reg. CF)を中心に議論を進める。同年の8月26日には,プロ投資家を意味する自衛力認定投資家(Accredited Investor)の定義を見直す最終規則も公開されており,これらを合わせて米国私募市場へのアクセスには総合的な見直しが実行されたと言えよう。
 ただし,このような私募市場の規制見直しは,伝統的な共和党の方針に則った施策であるため,21年1月に発足したJoe Biden政権ならびに連邦議会両院(ともに民主党が多数政党)では,改めて修正が加えられる可能性がある点を指摘しておく。

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