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第93号(2016年3月)

インターネットと投資家行動

丸淳子(武蔵大学名誉教授)
駒井隼人((株)ビデオリサーチインタラクティブ データサイエンティスト)
松澤孝紀(武蔵大学非常勤講師)

〔要 旨〕

 個人投資家の株式取引の80%以上がインターネット経由で行われている。ネット取引の最大の利点はコストの低さである。コスト低減の理由は取次の簡便さに加えて情報コストの節減である。金融取引に伴うリスクは預貯金中心で金融行動をしてきた個人で理解することが難しく,販売サイドと購入サイドの間では情報の非対称性が大きい。販売サイドからの情報・アドバイスが必要であり,店頭取引ではそのコストが加算されている。とくに株式より複雑な投資信託など仕組み資産では情報の非対称性のコストが高い。
 ネットでは情報コストが節約できるが,ネットはただ取引をつなぐだけではなく,低いコストで情報を広く浸透させ,普及させることが期待できる。規模の経済性が働きやすかった投資では従来リスク投資の足かせになっていた要因が金融資産額であった。ネットの登場は,資産の少ない若年層が積極的にリスク投資を展開できる機会を提供する。ネット証券のホームページには多様の商品情報が掲載されているから,投資家は商品の売れ筋,推奨ファンドなど過剰なほどの情報に直面している。投資家に本当に必要な情報提供のためにはネット上での金融商品についてのマーケティングが非常に重要となってきている。個人の金融行動を明らかにすることは必須条件であり,本稿では約6,000人のモニターから構成されるインターネットユーザーのパネルデータによって実証分析を実施している。マクロデータの平均値からは明らかにならなかった金融行動に与える要因を探求できよう。

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