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第75号(2011年9月)

研究ノート 証券化商品に対する最近の研究の動向
―アメリカにおける計量分析を中心に―

福田徹(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 本稿では,証券化に関する様々なテーマに基づいた実証研究を紹介する。サブプライム危機に代表されるような多くの問題点が露呈した昨今,欧米の証券化に関する状況についての検証が登場し始めている。それらのテーマについては,大きく2つに分けられる。1つは証券・金融市場における証券化の役割に対する検証である。もう1つは,証券化を行う過程でのプレーヤーの行動に関わる検証である。
 それらから主張される内容としては,証券化が銀行など金融機関の保有するローンの流動性リスクを低下させた結果,資金の円滑な移動を促進したというものがある。しかしながら,自己でリスクを取り続ける必要がなくなったため,銀行などに代表されるオリジネーターの近視眼的な行動が促進されたという事実も指摘されている。サブプライム層向けの住宅ローンの審査などについては,その有効性が認められなかった。また,シンジケート・ローンの証券化については,情報の優位性を持つオリジネーターがリスクの高いものを証券化する一方,そうでないものは保有し続けるという意思決定をしているという可能性も示唆されている。

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