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第75号(2011年9月)

金融商品取引業者等の顧客に対する責任に関する日米比較

萬澤陽子(当研究所研究員)

〔要 旨〕

 もし,金融商品取引業者等から金融商品を勧誘された顧客が,当該商品を購入し損害を被った場合,いかなる状況のもとでなら当該業者の責任を問えるのか。実は,我が国の金融商品取引法(以下,金商法)には,このような場合に,金融商品取引業者等の責任を顧客が問うための直接的な条文は存在しない。またこれはアメリカでも同様である。本稿は,金融商品取引業者等の民事責任を問う直接の条文がない両国において,顧客は上記のような場合にどのように救済を得られるのかを検討・比較し,その類似点と相違点を明らかにし,その背後にあるものを考察しようとするものである。
 これについて,アメリカでは,取引所法の詐欺を禁ずる一般条項10b-5を使って,ブローカー・ディーラーが専門家としての基準に従って行動すると黙示に表示していると読み込むこと(看板理論),あるいは,ブローカー・ディーラーと顧客の間の信認関係から生じる信認義務違反(信認義務理論)によって,損害を被った顧客に救済を与えてきた。他方,日本では,私法の一般法である民法の不法行為責任を規定する一般条項709条を使って,金融商品取引業者等の説明義務を信義則によって認め,その義務違反等をもって,当該金融商品取引業者等の民事責任を肯定してきた。
 両国のアプローチは,類似した概念を用いながらも,それを採用するにいたった背後にあるものは異なると思われる。本稿はそれを考察し,それがなぜなのかを示唆する。

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