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第62号(2008年6月)

モーゲージ証券化市場の拡大
―サブプライムが明かした米国住宅市場の脆弱性―

石橋妙子(熊本学園大学大学院博士後期課程)

〔要 旨〕

 公的信用が,重層的であるにも関わらず,スマートな形でビルトインされながら,長期に渡り発展を遂げてきた米国の証券化市場を背景に発生したサブプライム問題は,非常に大きな衝撃を与えるに至っている。
 近年の住宅モーゲージ市場の拡大は,擬制資本に対する投資に基づき,本来金融市場にアクセスのなかった層までをも取り込むことによって,それを可能にしたのに他ならず,今回のサブプライム問題を機に,米国の住宅貸付形態の複雑さと危うさが一気に露呈する結果となった。ホーム・エクイティ・ローンやサブプライムローンは,複雑化する貸出形態の一環に他ならない。皮肉な事に,住宅市場の拡大を牽引したのも,そして崩壊へ導いたのも,他でもない証券化技術の発展である。
 革新的な資金調達手段であったはずの証券化は,リスク転嫁を繰り返し,CDO(債務担保証券)を媒介に,明らかに世界の金融市場を1つにした。しかし昨今の状況には,公的信用を背景に発展してきた従来の証券化とは異なる展開もみられ,金融市場における証券化の意義も明らかに変化してきたと考えられる。収益商品としての証券化市場の拡大,その拡大を支える為の貸出先開拓。成熟し肥大化しきった米国の住宅証券化市場から,今しばらくは目が離せない。

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