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第62号(2008年6月)

金融調節オペレーションは金利の期間構造に影響を与えるか
―英米比較―

須藤時仁(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 本稿では,Campbell and Shiller [1991]のモデルに中央銀行による長期オペレーションおよびオペレーション全体の実施額を組み込む形でモデルを拡張することによって,オペが名目ベースと実質ベースのイールド・カーブに与える影響を考察した。対象は1990年代後半以降の米英である。分析の結果,次のような特徴を見出すことができた。
 長期オペによる中・長期金利への直接的影響はアメリカについてしか検証することができなかったが,その推定係数は有意にゼロとは異ならず,長期オペはイールド・カーブをかく乱しないように行われているという正統的な金融政策論者の主張が支持された。
 オペ全体による資金供給は将来の期待短期金利の下方修正を通じて間接的に中・長期金利を低下させる,いわゆる一般的な金融緩和効果が米英ともに見出された。ただし,イギリスでは推定された係数が有意とならなかった。さらに,資金供給が期待物価にどのような影響を及ぼしていたかを推定された係数から推測すると,両国の中央銀行はインフレ期待を抑制するように金融調節を行っていることが示された。

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