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第60号(2007年12月)

インドの国際シンジケート・ローン市場
―地場銀行と外国銀行の競合関係―

山口昌樹(山形大学准教授)

〔要 旨〕

 本研究の分析対象はインドの対外調達で急速に伸びている国際シンジケート・ローン市場である。その供給構造を見ると外国銀行が席巻しており,一見すると地場銀行の役割は小さい。地場銀行は外国銀行と代替可能な資金を出しているに過ぎないのであろうか。
 この課題に答えるため貸出案件のミクロ・データを用い,外国銀行と地場銀行との競合の構図を探った。分析の結果,まず,外国銀行が手がける案件は信用力の高い企業が中心であり,地場銀行が相対的にリスクの高い企業をカバーしていることが分かった。次に,地場銀行は外国銀行では難しい非代替的な資金を供給しているという点で存在意義を発揮している。これは経済成長に必要な設備投資資金を地場銀行が信用力の劣る企業に供与していることからうかがえる。
 実証分析から浮かびあがった銀行間の差異は市場における棲み分け構造を示唆する。この構造は同じシ・ローンであっても外国銀行がtransaction lendingを,地場銀行がrelationship lendingを志向するという市場行動から形成されている。また,棲み分け構造が地場銀行のポートフォリオ劣化,不良債権の増加という帰結をもたらすのであれば金融システムに負荷をかけていることになろう。

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