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第60号(2007年12月)

金融政策と国債市場
―量的緩和期における日本銀行の買入国債の特徴―

須藤時仁(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 本稿の目的は,日本銀行による買入オペレーションと国債市場との関係をオペの買入国債の観点から考察することである。具体的な論点は2つある。第1に,日銀はオペによって買い入れる国債をどのように選んでいるのか。第2に,アメリカのニューヨーク連銀(NY連銀)による買入オペの国債選択と比較したとき,日銀の選択に特徴があるのかという点である。分析期間は,日銀による量的緩和期にほぼ相当する2000年から2006年である。
 分析結果をまとめると,日銀による買入オペは国債の需要を補完する役割を担っていると結論できよう。その意味では,オペは市場に対して中立的に行われているとは言えない。特に20年債に対してはオペによる価格支持が行われている疑いが強い。しかし,特定の年限に関してではなく全体としてオペを評価したとき,オペが国債価格支持政策に組み込まれていたと必ずしも結論することはできない。オペによる需要補完の傾向はNY連銀の場合にも見られるものであり,しかも財政状況が悪化している時期には日銀のオペよりも残存期間が長期のゾーンからの買入比率が急上昇している。つまり,NY連銀の買入れオペは強い需要補完の役割を果たしているのであり,オペ全体としてみた場合には,NY連銀より日銀のほうが市場に対して中立的なオペを行っていると言えよう。

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