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第58号(2007年6月) EU単一金融市場の展開と英国の対応

米国金融行政とアカウンタビリティについての考察

西尾夏雄(埼玉大学大学院博士課程)

〔要 旨〕

 金融業はその特殊性と経済活動における重要性から各国で規制されてきたが,それぞれの自由化の進展や金融危機などの経験をもとに,規制のあり方も変化している。経済活動における重要性という観点から公的なセイフティ・ネットが整備される必要がある一方で,金融機関の健全性を維持するために当局による適切な監督と規制が期待されている。
 「どの程度の規制が適当なのか」という命題については,政策担当者や学会の間でも意見の違いが大きく,また各国の金融セクターを取り巻く環境が異なることもあり,普遍的な答えは出ていない。しかし預金者や投資家といった金融サービスの「利用者」の保護という認識の下では,利用者の代理人として金融機関を監督すべき行政にはなるべく透明性の高い,また説明責任のつく対応が求められていることは明らかであろう。
 米国は1991年の「連邦預金保険公社改善法(FDICIA)」の成立を経て,それまでの裁量的な銀行監督を排除する仕組みを模索し,ある程度において確立している。その一方で未曾有の金融危機を克服したばかりの日本の監督当局においては,規制・監督方針をあらためて確立することが求められている。現在の金融庁はルールに基づく「事後モニタリング方式」を重視しているが,米国の経験を考慮すると,ルール行政のみでなく「説明責任のつく」監督・検査体制を確立することが重要と考えられる。

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