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第58号(2007年6月) EU単一金融市場の展開と英国の対応

非市場性国債の活用―国債管理政策の視点から―

須藤時仁(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 本稿では,英米における非市場性国債の現状について考察した。具体的な論点は,(1)非市場性国債としてどのようなものがあるか,(2)非市場性国債を発行する場合にそのメリットと国債市場への影響にはどのようなものがあるかという2点である。分析の結果,貯蓄国債,政府部門向け非市場性国債のいずれについても両国とも類似の制度を有しているが,イギリスでは政府部門向けより貯蓄国債および貯蓄口座を含む貯蓄投資商品を財政資金のファイナンスに積極的に活用している。一方,アメリカでは社会保障基金など政府基金の運用に政府部門向け非市場性国債を積極的に活用しているという特徴が見出された。
 非市場性国債を発行する大きなメリットの1つに,市場性国債の供給圧力を緩和できる点が挙げられる。特にアメリカでは,その意味で非市場性国債を積極的に活用している。しかし,この非市場性国債の多くの部分を社会保障信託基金が保有しているが,同基金の残高は2027年以降急速に減少する見通しであり,その場合,国債全体の発行圧力が緩和されない限り,市場性国債の供給圧力が急速に大きくなると予想される。
 わが国では,非市場性の貯蓄国債(個人向け国債)は既に発行されている。政府部門向け非市場性国債の発行について考えてみたとき,その引受先として考えられるのは社会保障基金の公的年金であろう。今後,市場性国債の供給圧力を緩和するためにも公的年金の運用に対して非市場性国債を発行することも考えられよう。ただし,2046年度以降は公的年金の積立金が減少に転じる見通しであることから,市場性国債の圧迫要因となるため,それまでの間に国債の総発行額を減らすよう財政再建を図る必要がある。

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