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第47号(2004年9月)

オーナー会社や子会社の株式公開
―企業形態などが初期乖離率やIPO後株価パフォーマンスなどに及ぼす影響の統計分析―

辰巳憲一(学習院大学教授)
桂山靖代(京都大学大学院博士後期課程)

〔要 旨〕

 様々な業種に属し,様々な経営形態と資金調達方法をとっている1996年から1999年までのJASDAQ新規上場企業がどのような初値乖離率や上場後株価パフォーマンスを実現しているのか検証する。これらIPO企業の過半はいわゆるオーナー会社と既上場会社の子会社・関連会社であり,それらの囲い込み仮説やお墨付き仮説に注目し,単純な統計分析を行う。
 親会社と子会社一般株主とは,行動目標が違い利害は一致しない。親会社が囲い込みをすれば株主間利益相反は益々激化する。例えばグループ戦略をとっている親会社の裁量で他社と合併させられて上場廃止になるような,派遣されている経営者が経営上の独自性を持たないような子会社・関連会社の株式を,投資戦略上保有する意味は投資家にとって小さい。この仮説が正しければ,親会社持ち株シェアの高い会社がIPOすれば,公開価格は低く,他の条件が一定なら初値乖離率は高くなる。また,上場後パフォーマンスとの相関もプラスになる。
 他方,能力あるオーナーや将来性のある親会社が確実に子会社の経営を掌握しているなら,子会社・関連会社の将来も明るく,オーナー・親会社は投資家に対してお墨付きを与え,公開価格は高く,他の条件が一定なら初値乖離率は低く,親会社持ち株シェアと初値乖離率の相関はマイナスになる。また,上場後パフォーマンスとの相関もマイナスになる。
 サンプル全体では強くないが囲い込み仮説を支持した。しかし,年次ごと業種ごとの相関からみた結果は,オーナー会社や親会社の特性は様々であることを示しており,オーナー囲い込み仮説は広く成り立っていない。親会社の囲い込み仮説とお墨付き仮説は,どちらが妥当するか,年次や業種によって異なる。

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