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第34号(2001年11月) アメリカ型企業ガバナンスの諸側面

アメリカにおける金融制度改革とソーシャル・ガバナンス

井村進哉(中央大学教授)

〔要 旨〕

 アメリカでは1999年にグラム・リーチ・ブライリー法(Gramm-Leach-Bliley Act of 1999,以下 GLB 法)が成立し,66年ぶりに銀行業務と証券その他の業務の兼営を認める金融制度改革が実現した。これにより1980年代以来のグラス・スティーガル法の廃止をめぐる議論には,一応の決着がついたことになるが,このことは同時に,銀行業界と証券,投信,保険業界など関連業界との間の妥協とともに,地域社会との間でも一定の利害調整が行われたことを意味する。
 事実 GLB 法は,単に持株会社を通じた銀行業務の多角化に関する条項にとどまらず,多面的な条項を含んだ包括的立法となった。とりわけ同法は,住宅金融システム,コミュニティ開発事業を支える政府関連企業体である連邦住宅貸付銀行制度の改革をはじめ,CDFIFund(コミュニティ開発金融機関基金)の存続,預金者・消費者保護を目的としたプライバシー保護規定,銀行の ATM 手数料に関する情報開示義務規定,さらには地域社会資金還元法(CRA)規制の手直しに至るまで,銀行業務の多角化と再編に伴うきわめて多様な利害関係の調整を含むものとなっているのである。
 このような事実を前提として,本稿は,貯蓄金融業界,投資信託業界,証券業界,および保険業界と商業銀行との間の利害調整過程を追うとともに,地域社会=コミュニティとの利害調整について,FHLBank 制度の改革,コミュニティ開発金融機関基金の延長,および CRA 規制と ATM 追加手数料問題を,議会審議を中心に検討する。それを通じて,多様なステークホルダー相互間の利害調整過程として現れたアメリカの金融制度改革におけるソーシャル・ガバナンス過程の特質を検討している。

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