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第119号(2022年9月) テクノロジーと金融革新に関する研究会特集号

金融商品取引法上の有価証券の類型と規制の適用関係
—トークン化有価証券に対する規制の立法論的考察—

有吉尚哉(西村あさひ法律事務所パートナー弁護士)

〔要 旨〕

 金融商品取引法においては,規制の柔軟化の考え方により,有価証券の類型ごとの特性を踏まえて適用される規制の内容が異なっている。2020年5月1日に施行された金融商品取引法の改正により,電子記録移転権利の概念が設けられるなど有価証券を電子的なトークンに表示した場合(トークン化)の規制の適用関係について見直しがなされた。この中では,電子記録移転権利を第一項有価証券として取り扱い,株式や社債などと同等の開示規制・業規制が適用されるなど,トークン化によって流通性が高まることを主な理由として,規制の整備が図られている。しかしながら,トークン化したからといって法的に譲渡のための手続的負担が小さくなるものではなく,事実上,譲渡を行いやすくするプラットフォームが備わっている蓋然性が高いといった点を考慮するとしても,規制を強化する必要があるほど流通性が高まるといえるか明確とはいえない。新種の商品に関して予測がしにくい不公正取引がなされることを抑止するための政策的な考慮もあって規制の強化が図られたものと考えられるが,今後のトークン化有価証券の利用状況や市場の動向次第では,過剰・重複規制とならないよう規制の適用関係を整理し直すことも検討されるべきではないかと考える。

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