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第114号(2021年6月)

アベノミクス下の消費における資産効果の計測

宮崎浩伸(南山大学経済学部准教授)

〔要 旨〕

 アベノミクスにおいては,日銀による強力な金融緩和政策がとらえてきた。本稿では,「家計調査」の都道府県庁所在市別かつ消費費目別パネルデータを用いて,アベノミクス下の消費における資産効果について,分析している。主な分析結果は以下の通りである。
 第一に,株式・株式投資信託を通じた消費の資産効果は,アベノミクス期において,強く働いたことが明らかになった。
 第二に,株式・株式投資信託だけでなく,銀行・郵便局による預貯金や生命保険等を中心とした包括的な総貯蓄現在高による資産効果については,概ね既にアベノミクス期以前から働いていたことも確認できた。
 第三に,消費項目を分けて分析した結果によると,必需財においては,株式・株式投資信託を通じた資産効果は確認できなかった。これに対して,奢侈財においては,株式・株式投資信託を通じた資産効果と総貯蓄現在高による資産効果のいずれも,アベノミクス期以前から働いていたことが明らかになった。
 第四に,奢侈財において,株式・株式投資信託を通じた消費の資産効果は,アベノミクス期以前よりもアベノミクス期でより大きくなっていることが明らかになった。
 以上から,アベノミクス期では,株式市場を通じた消費の資産効果が,とりわけ奢侈財において,より大きくみられたといえる。

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