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第113号(2021年3月)

戦時末期の国債売買と投資成果

平山賢一(東京海上アセットマネジメント(株))

〔要 旨〕

 戦時末期の国債市場は,取引所売買高が減少したことから,流通市場での売買が低迷したとされている。しかし,巨額化する国債発行に応じて,日本銀行や預金部等による国債オペレーションが積極化されたことを背景に,取引所外では活発な店頭取引が行われていた点が,証券会社の営業報告書等のフローデータから確認された。この間の国債投資成果についての詳しい研究は多くないものの,日本政府により積極的な国債価格統制が強化された経緯を売買行動と投資成果を結びつけて整理しておくことは,政府と市場の関係性を考える上で意義があると言えよう。
 本稿は,1924年6月から44年11月までの株式投資成果を明らかにした昭和初期国債パフォーマンスインデックス(Government Bond Performance Index;GBPI)について,その期間を終戦(45年8月9日)まで延長し,戦時末期の国債市場動向を再整理している(延長期間部分をGBPI-EXTENDEDと称することにする)。この延長期間の国債価格は,1944年6月の「国債証券,貯蓄債券及報国債券ノ価格指定ニ関スル件」に代表される大蔵省告示等により,国債消化の円滑化を図るために一本値化された点は重要である。株式市場においては価格決定機能が市場に残余されたものの,国債市場においては戦時資金循環の根幹であったことから,価格統制の強化が徹底されたと考えられる。
 その結果,市場介入が特に強化された1944年から1945年にかけての戦時末期のリスク水準は0.00%水準に張り付いた。短期金融市場の東京コールのリスク水準も同水準であることから,戦時末期の国債リスクは,短期金融市場化したと言えよう。リスク水準がほぼ同水準になったにもかかわらず,国債の投資成果は,トータルリターン指数3.67%(1944年1月~12月),2.41%(1945年1月~8月)であり,短期金融市場の3.29%(1944年1月~12月),2.18%(1945年1月~8月)を上回っていたという歪んだ関係性は,政府による国債価格統制の強さの証左と言えよう。
 尚,東京小売物価指数は,上昇率(1944年1月~12月)+17.65%程度,同(1945年1月~8月)+23.94%と高く,国債の実質リターンは大幅なマイナスに陥り,国債投資家の資産価値を毀損したと言える。そのため,国債保有による実質的な投資家のダメージは,終戦を画期として発生したのではなく,戦時末期にすでに発生していたと考えられる。

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