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第113号(2021年3月)

戦時投資信託について

深見泰孝(駒澤大学経済学部准教授・当研究所特任研究員)

〔要 旨〕

 本稿では戦時投資信託について取り上げた。それが創設される経緯とその背景を大蔵省,証券引受会社,信託業界の立場から検討し,次に,戦時投資信託の運営状況からその意義を検討した。まず,投資信託創設を巡っては証券,信託業界間の業際問題があり,両者が投資信託創設を望んだ背景には,馬場財政以来の国債大量発行に伴う低金利政策の強行による負の影響があった。そして,大蔵省がこの問題に一貫した行政方針で臨まなかったことも,我が国での投資信託創設を遅らせたのである。
 ところが,日米開戦を控え,生産力拡充資金と国債消化資金の一層の供給を求められた大蔵省は,投資信託を新たな長期貯蓄手段の一つに位置付け,野村証券とそれの創設に向けた準備を始める。こうして戦時投資信託が創設されるわけだが,戦時統制下で作られた商品だけに,運用は政府の指導下に置かれ,生産力拡充資金や国債消化資金の供給への利用が目論まれた。ただし,大衆層の資金を預貯金から投資信託へシフトさせるには,高い利回りが必要だったことや,株価維持,生産力拡充資金の供給を目的に創設されたこともあり,その資金は株式に大きく配分された。そうすると価格変動リスクも大きくなり,リスク耐性の小さい大衆資金を吸収できないため,これを長期貯蓄手段として育成したい大蔵省は,認可条件として損失補償の実施を求めたことを明らかにした。
 そして,その運用は,株式投資によって得た収益が,国債に再投資されており,戦時投資信託は主として株価維持,生産力拡充資金供給を目的とし,副次的に国債消化資金の供給にも活用されたと結論づけた。

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