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第94号(2016年6月)

株式公開と資本構成—インドの上場・非上場企業の比較分析—

吉田隆(MS&AD基礎研究所主管上席研究員)

〔要 旨〕

 本稿は,第一に,負債比率の水準及び感応度に対する株式公開の影響,第二に,非上場企業の負債比率の水準に対する親会社の株式公開の影響を,インドの上場・非上場企業データを用いて分析する。
 第一の分析の結果からは,他の国を対象とする先行研究と異なり,負債比率の水準及び利益率に対する負債比率の感応度に,株式公開の影響が認められない。この結果の背景には,銀行規制・監督の特徴と社債市場の未成熟とが企業の負債発行費用を高くしているというインドの資金調達環境の特徴があると推測される。株式公開に伴う開示情報の充実が負債のエージェンシー費用を低減するという影響が強い反面,負債は株式公開後も,内部資金との比較では依然高コストであることが,先行研究と異なる結果を生じさせたと考えられる。
 第二の分析に先立ち,理論的背景として,(ⅰ)親会社の株式公開が非上場子会社の内部資金を実質的に充実させることを通じて,非上場子会社の負債比率を低下させうる一方,(ⅱ)非上場子会社が財務的危機に陥る場合に,資本市場で一定の評判を得た上場親会社の主導により財務の再構築が円滑に進む可能性を考慮すると,財務的危機の期待費用が小さくなるため,非上場子会社の負債比率が上昇しうることを論じる。第二の分析の結果,非上場子会社の負債比率に対して,インドの上場親会社の存在は有意な影響を及ぼさないが,先進国の上場親会社の存在は負の影響を及ぼす。後者の結果は,先進国の上場親会社がインドの資本市場で評判を確立することが必ずしも容易でないために,(ⅱ)の影響が小さく,そのため(ⅰ)の影響が優越すると解釈される。

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