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第89号(2015年3月) 公社債市場の変遷を辿る

21世紀初頭の企業収益,企業財務の動向

木村由紀雄(目白大学教授)

〔要 旨〕

 20世紀末,企業財務の環境は大きく変わった。企業はバブル崩壊不況下で3つの過剰の整理に苦しんできたが,ようやくそれに目途をつけたところへ,政府によって金融ビッグバンという改革が実施された。日本の金融・証券市場を国際水準に引き上げるとともに,企業金融を間接金融から直接金融へシフトさせ,日本の企業金融を証券市場中心にするというのがそのねらいであった。企業自身も株価低迷に苦しんできたため,証券市場,株主重視の経営に舵を切ろうとしていた。
 21世紀初頭はそうした各者の意図が初めて交錯する時期であった。この時,企業は実際にどのような財務活動を行ってきたのか。財務活動の前提となるのは,企業収益である。そこで,2000年代,10年の企業収益動向を分析し,それが企業の財務活動へどうつながっていったのか,企業はどのような財務活動をおこなったのか,明らかにしたい。
 21世紀初頭,企業収益は海外経済の好調に導かれて,期待以上に改善,好転した。しかし,企業が設備投資を積極化させ,外部から資金を取り入れる段階までは至らなかった。財務活動は負債削減優先,自社株買いの増加という基調に大きな変化はなかった。2008年にリーマン・ショックが発生すると,再び守りの姿勢が強化されてしまったのではないか,と思われる。証券市場が期待したような財務行動の変化は起きなかった。現在,リーマン・ショック,東日本大震災を超え,企業収益は新たな拡大期にある。財務行動に変化が起きるか,見守るべき時である。

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