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第85号(2014年3月) 情報化に揺れる株式市場における様々な論点

IRとソーシャルメディアの進展

米山徹幸(埼玉学園大学教授)

〔要 旨〕

 本論は企業IRのソーシャルメディア活用を,企業の対応やアナリスト/投資家,証券会社,監督当局などの動きから,2009/2010年を「幼年期」,2011/2012年を「環境準備期」,2013年以降を「定着期」の3期に分け,その急速な展開を概括する。
 今世紀に入って登場したウィキぺディア(2001年),フェイスブック(03年),ユーチューブ(05年),ツイッター(06年)などソーシャルメディアは,09年にアレクサ・トラフィック・ランキングで上位10のうち6つを占めるに至り,ウェブ空間の情報拡散に大きな変化をもたらした。
 IRサイトで先行する企業をはじめ,株主・投資家,証券会社やアナリストなど金融サービス業界も急展開するソーシャルメディアに敏感に対応する。ツイッターで売買スプレッドが縮小するといった研究やツイッターによるIRの是非を問う議論の中,2010年,全米IR協会(NIRI)は,ソーシャルメディアはIR担当者での個人利用とIR業務での利用に大きな差があるとの調査を発表し,「ソーシャルメディアは幼年期」と形容した。
 米国では2000年にSEC(米証券取引委員会)が公平開示規則を施行して以来,自社サイトを使った電話会議の公開が一般的となり,2008年にはSECの企業ウェブサイト・ガイダンスも登場した。2010年,ソーシャルメディアの利用でFINRA(金融業界規制機構)がFA向けにガイドラインを制定し,対顧客とのコンタクトに道筋をつけた。IR業界でも,2012年にNIRIや英国IR協会(IRS)はソーシャルメディア・ガイダンスを発表。こうした一連の動きは,ソーシャルメディア利用に向けた「環境準備期」といっていい。
 2013年,オーストラリア証券取引所(ASX)は,重要情報の発表にあたってはソーシャルメディアの動向を確認し,モニターするように求める新ルールを施行した。ガイドライン,2013年にSECがソーシャルメディアによる重要情報の開示方針を示し,ブルームバーグのツイッター分析サービスも始まり,米企業の決算電話会議ではツイッターの利用も始まった。IR業務にソーシャルメディアの本格利用は「定着期」に差しかかっている。

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