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第85号(2014年3月) 情報化に揺れる株式市場における様々な論点

価格感応情報と売買停止制度—オーストラリア証券取引所の取り組み—

木村真生子(筑波大学大学院准教授)

〔要 旨〕

 事前報道を受けた適時開示制度の在り方について現在議論が続いている。適時開示制度は最新の情報を迅速・公平に会社から投資者に提供させることで,市場の公正性と健全性に対する投資者の信頼を確保することを目的とする。しかし情報開示の迅速性を優先させれば,情報の真実性や正確性を担保することが相対的に難しくなる。
 他方で,会社はどのようなタイミングで情報を出しても,常に市場の反応に苛まれる。情報に対する意見は,報道機関のみならずインターネットやソーシャルメディアを通じて絶えず発信されているからである。このような事情を考慮すれば,取引所のみが一方的に情報の拡がりをコントロールすることには一定の限界があることになる。
 本稿は,事前報道を受けた適時開示制度の在り方を検討するために,価格感応情報に関する売買停止制度の改善を行った,オーストラリア証券市場の経験を素材に考察を行うものである。売買停止制度は,上場会社が価格に重大な影響を及ぼす情報を市場に速やかに公表できないときに,上場会社の要請により,取引所が当該会社の有価証券の売買を原則2日間停止するもので,自発的な売買停止の場合には合理的な期間に及ぶ。
 売買停止制度は市場の流動性を低下させ,投資家保護に反するという見方もあるが,情報発信の仕組みが多様化し,企業に関わる情報が氾濫する今日では,却って売買停止が市場の公平性や投資家の信頼保護に資する可能性がある。

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