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第76号(2011年12月)

自己株式取得の動機と株式所有構造
―過小評価シグナリング動機からみた株主の影響―

蜂谷豊彦(一橋大学大学院教授)
滕敏(東京工業大学大学院博士後期課程)

〔要 旨〕

 自己株式の取得は,近年,株主への利益還元としてだけでなく,過小評価のシグナル,買収防衛あるいは資本構成の調整などの目的を達成するために用いられている。先行研究では,これらの動機の時間的一貫性や相対的重要性などが解明されているが,株主と経営者とのエージェンシー対立の大きさを考慮していないという問題と,経営者が意思決定をする際の動機の強さが主観的判断に依存するという問題を抱えていると考えられる。本論文では,株式所有構造を用いて外部株主からの圧力の強い企業と経営者支配の強い企業を特定することによって前者の問題に対処し,また主要な説明変数について産業調整前の絶対水準と産業調整後の相対水準という2種の変数を用いることによって後者の問題に取り組み,1997年から2006年に自己株式取得を公表した2113件のサンプルを対象にして実証分析を行っている。
 株式所有構造と自己株式取得の規模との関係についての分析では,外部株主からの圧力の強い企業の方が自己株取得に積極的で,より大規模に行うことを選択する傾向が強いことが確認できた。これは,外部株主からの圧力が,経営者に対して,株主の利害に沿った行動をとるように促していることを意味している。また自己株式取得の動機が経営者の主観的判断に依存することに注目し,主要な説明変数について産業調整を行う前の絶対的水準と調整後の相対的水準に焦点を当てた分析を行った。これらの分析結果を比較すると,時価簿価比率と自己株式取得の公表との間には頑健な負の関係があること,モデル全体の説明力や時価簿価比率の係数の大きさ,有意性には大きな違いがみられないことがわかった。

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