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第76号(2011年12月)

金融危機下のイングランド銀行金融政策

斉藤美彦(獨協大学教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 今次金融危機に対応してイギリスの中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は政策金利の引下げ以外の種々の非伝統的・非正統的政策を活用してきている。ゼロ金利制約近辺に陥り,量的緩和政策の採用に追い込まれたが,準備預金制度を活用し,短期名目金利をゼロとすることなしに量的緩和を実施したという点は注目されるべきである。ただし,イギリスにおいても量的緩和政策において「量」そのものの緩和効果があるかどうかについては疑問符が付けられざるをえない。イギリスにおいても量的緩和の効果が限定的であると考えられるのは,イギリスにおいても銀行貸出の制約要因がリザーブであるとは考えられないからである。
 景気低迷下においては長期金利の上昇を抑える必要があることから,中央銀行に国債購入への圧力がかかりやすくなってきている。中央銀行の買いオペで国債の利回りを低下させるには,中央銀行が国債市場における価格形成を支配できるほどの圧倒的に巨大な購入者となるということと,中央銀行が巨額の国債を購入しても人々にそれが財政赤字の貨幣化(マネタイゼーション)と思わせないことが重要であろう。BOEは,非常に大量の国債を購入したということで前者の条件を満たした。一方,政府の緊縮財政は後者の条件を満たしたとはいえるが,それが最適なポリシーミックスであったかどうかは疑わしい。BOEの金融政策が2010年以降,身動きが取れなくなっているようにみえるのは,これまたイギリスの危機の深刻さを表しているように思われる。

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