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第71号(2010年9月)

サブプライム住宅ローンと金融機関
―なぜ,サブプライム住宅ローンの貸出残高が拡大したのか―

森谷智子(嘉悦大学専任講師)

〔要 旨〕

 米国における住宅バブルは,カリフォルニア,フロリダ,ニューヨークなどの地域を中心に2001年から2005年まで続いた。しかし2006年以降,サブプライムローンの延滞率が急激に上昇することにより住宅バブルはその終焉を迎えることになった。そして翌年2月以降,米国におけるサブプライム問題が表面化したのである。
 サブプライムローンとは,信用度の低い借手向けの住宅ローンのことを意味している。このサブプライムローンを含む証券化商品の発行額は,2000年から問題が表面化するに至るまで増加することになった。サブプライム問題による損失額は,当初,日本における1990年代のバブル崩壊以降の不良債権額と比較すると小規模であることから,早急に解決すると考えられていた。しかし,米国ばかりではなく,欧州や日本の投資家がCDO(Collateralized Debt Obligation)に投資したことから,リスクの所在が複雑化することになった。そのため,金融機関が破綻もしくは政府支援を受けたことは記憶に新しい。たとえば,大手保険会社のAIG,11月にはシティグループが米国政府から支援を受ける事態へと深刻化したことは記憶に新しいであろう。
 現在,サブプライム問題や金融危機を受けて,欧米における格付機関への規制などが強化されている。また,日本でも証券化商品市場をはじめとする資本市場を適切に機能させるために,格付機関に対する規制が導入された。今回の金融危機では,格付機関による格付けの信頼性に関して批判されることが多いが,このような証券化商品を組成したのは,大手金融機関である。
 そこで,本稿では,サブプライム問題そして金融不安をもたらした大手金融機関を中心に問題点を指摘する。その際,OTD(Originate-to-Distribute)モデルも今回の金融危機をもたらした要因の一つであることを述べる。さらに,どのようにサブプライムローンが証券化商品に組み込まれたのか,そして発行された債券を如何にして消化してきたのかについて明らかにする。最後に,サブプライム問題そして金融危機から日本が学ぶべきことについて検討する。

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