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第64号(2008年12月)

新しいファイナンスをめぐる問題について
―MSCBおよび新株予約権をめぐって―

松尾順介(桃山大学教授・当研究所客員研究員)
大杉謙一(中央大学大学院教授)
岡村秀夫(関西学院大学教授)

〔要 旨〕

 1990年代以降,上場会社のエクイティ・ファイナンスの主流は,公募から第三者割当てへと傾向的に変化してきたが,さらに最近では,新株予約権付社債あるいは新株予約権を単独で大量に発行し,第三者割当てを行う事例が多く見られるようになっている。MSCB(転換価額修正条項付き転換社債)はその一例であるが,権利内容を様々に工夫した新株予約権による資金調達も行われ,エクイティ・ファイナンス手法の多様化が進展している。
 このような最近の事例には,経済的に見て歓迎すべきものと問題含みのものとが混在しており,ファイナンスを実施したことによって,大幅な株価下落が生じ,投資家・株主の不信感を強めるような事例も報告されている。
 本稿では,このようなファイナンスの現状を考察した上で,歓迎すべきファイナンス手法を抑圧せず,規制すべきファイナンス手法を抑止するための法制度(会社法の解釈や証券取引所の自主規制)について検討を加える。なお,本稿の結論は,以下である。日本の会社法は,企業のエクイティ・ファイナンスに対して価格の妥当性(有利発行規制)と支配権へのインパクトの許容性(不公正発行)という観点からの規制を置いている。しかし,MSCBおよびこれに類する近時のファイナンス手法は,情報の非対称性が大きく株価が企業を過大評価ないし過小評価している状況では時価で公募増資を行うことができないという問題への対処として開発されたものであり,このようなファイナンスに対して従来通りの有利発行規制を及ぼすことには過剰規制の疑いが生じる。他方,「会社経営者が既存株主の利益につながらないエクイティ・ファイナンスを行うかもしれない」という問題(経営者の規律付けの不足)について,日本法が及ぼしている不公正発行規制は不十分である。この法規制の不足に対処するためには,自主規制機関による自主規制を整備するとともに,取締役には,新株予約権の発行によって会社・既存株主の利益を損なうことをしないという義務があり,その具体化として上記規制を位置づけるべきである。

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