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第59号(2007年9月)

日本企業における敵対的買収防衛策の導入要因

川本真哉(京都大学大学院博士後期課程)

〔要 旨〕

 近年,頻発する敵対的買収に歩調をあわせるように,多くの日本企業で買収防衛策の導入が相次いでいる。なかでも脚光を浴びているのは,「事前警告型」の買収防衛策である。こうした買収防衛策の導入は,経営者の保身行動を助長するのであろうか。あるいは従業員の人的資産の保護に資するものなのであろうか。そこで本稿では,事前警告型などの敵対的買収防衛策がいかなる動機・要因によって導入されているかについて,企業を取り巻くステークホルダーの利害を念頭に置きながら検討を試みた。
 離散選択モデルを用いた実証分析からは,以下のような点が確認された。(1) 現状では,パフォーマンスの劣る企業の経営者が保身のために防衛策を導入しているとはいえない。(2) もっとも,企業特殊的技能の形成を示す変数も有意に効いておらず,従業員の保護を目的として買収防衛策の導入がなされているとの証拠も見出せなかった。(3) 買収防衛策の導入にもっとも影響を与えていたのは,当該企業の所有構造であった。株式集中度が高い企業では買収防衛策の導入確率は低い反面,機関投資家の持株比率が高い企業では防衛策の導入に走る傾向があった。また,事前警告型防衛策と信託型ライツプランを導入している企業では,その他の買収防衛策も同時並行的に取り入れており,安定株主工作,従業員持株会の充実,さらには自社株購入などにも積極的であることが示唆された。

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